第5章 嘘つきは大嫌い【今吉翔一】
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高校三年、冬。
《きゃー、山口くんにチョコ渡しちゃった~!》
そんな時期も終わり。
《はぁー・・・実力テストとか怠ぃ・・・》
そんな時期も終わり。
《あっという間だったなー・・・
────三年間!》
・・・そんな時期。
そう、卒業式だ。
「えーお前らもとうとう卒業やなぁ。
あっちゅーまやったやろ、三年間」
今吉先生が、嘲笑うように言うから誰も答えない。
「・・・先生泣くで? ほんまに」
「やだ泣かないでよ先生」
「ちょっと良い年してそういうのは」
「先生も相変わらずだよね、ほんと」
・・・可哀想だな、さすがに。
「・・・お前ら、ほんまに先生のこと尊敬しとるんか?」
してる訳ないじゃん!
クラス中から飛び出す声。
可哀想だな、先生。
「えー・・・まぁ、ええわ」
いいんかい。
「・・・ほんまに、成長したと思うで」
なに、いきなり回想?
「お前らがここまでやって来れたんは、先生のおかげやない。当たり前や」
・・・────、
「───お前らが手を差し伸べたから、ワシも手を伸ばしたんや。
・・・お前らはすごいで、ほんま」
シーンと静まり返る教室。
────その瞬間。
「うわぁ!?」「きゃあ!?」
『!!』
桜吹雪が、教室を舞う。
先生がメガネの奥でニヤリと笑った。
「・・・よっしー、すごい」
「・・・よっしー魔法じゃん」
「何そのよっしーて」
少しずつ立っていく歓声。
・・・すごい。
「どや、これで少しはわかったやろ?
・・・忘れへんで、みんなのこと 」
涙腺が・・・・・・緩まないけど。
胸の奥が、苦しいような、熱いような。
先生・・・
『・・・敵わないな・・・』
・・・だけど。
「・・・よっしー、卒業式明日」
「・・・」
「前日にこんな風に言われても、ねぇ?」
「気まずくなるだけだよ」
「・・・」
・・・そう、明日なのだ。