第5章 嘘つきは大嫌い【今吉翔一】
維side───────────---
・・・信じられない。
《───次、バレたらつまらんで。
もうお痛はせんとき。》
・・・うるさい。
何を、分かったみたいに・・・
───何も分かってないくせに何を分かったように言うんだ。
あの日から、作り笑いも質が落ちたように思える。
まさか、先生に真っ先に見破られるなんて。
・・・信じられない。
──────────────---
「・・・えー・・・でな。
ここからここまでがテスト範囲や。」
ちゃんと勉強しなきゃアカンでー。
やる気が見られないいつもの声。
・・・こんな奴にバレるなんて。
自分のどこが悪かったのかと思い返してみる。
・・・別に何もしていない。
入学してからここまで、猫を被ってきた。ずっと。
提出物も課題も、期限内。
ノートもちゃんと取ったし、
テストの成績もまぁまぁ。
・・・何も、欠落は作ってない筈なのに。
ふと目線を上げると、男子生徒と喋りながら口許をニヤませる先生。
・・・何者なの、あの人・・・
──────────────---
気がつけば、ノートは落書きでいっぱいになっていた。
落書きといってもイラストなんかじゃなくて、
どうして見破られたとか、
あの人は何者なのかとか、
そんなことをバンバン書いていたら、こんなになってしまった。
・・・はぁー・・・。
・・・お昼か。購買行こう。
『・・・』
憂鬱、だ。
こんなに憂鬱になったの、久しぶりだ。
・・・昔、こういうふうに憂鬱になったとき、あの人が話を聞いてくれたな・・・
──────────────---
《あ? 退屈?》
《うん・・・なんかもう、人生楽しくない》
《何言ってんだバァカ。
お前まだ人生のこと知らねぇだろ》
《なっ・・・もう分かるし》
《・・・あのな、自分で思ってる以上に思い通りにいかねぇぞ、これから》
《え?》
《───少なくとも、俺がそうだった》
・・・なんで、こういう肝心なときに居ないんだろう・・・
・・・真兄。