第4章 出逢うことの無かったふたり【火神 大我】
『・・・ね、新キャプテン』
「!
・・・そういう弄りは恥ずかしいな・・・」
『いいじゃない、特権なんだし。
・・・それよりね、お願いがあるの』
「お願い?」
私だけじゃない。
元・陽泉バスケ部からのお願い。
『・・・変わらないでね』
「・・・────Of course.」
『・・・相変わらず発音がいいなぁ』
「伊達にアメリカ居た訳じゃないからね」
彼らしくないような、彼らしいような言葉に、思わず笑ってしまう。
すると、彼はゆっくりとこちらを向いた。
「・・・維先輩」
『!』
「───今まで、ありがとうございました」
『っ───・・・』
──────────────---
《あー、維ちーん》
《こら、アツシ。先輩に向かって──》
《あ、いいのいいの!
私が呼びやすい言い方でいいよって言ったから》
《そうなんですか・・・》
《氷室くんも下の名前で呼んでいいし、タメで全然いいよ》
《え、いや、そんな・・・》
《むっ・・・じゃあ先輩命令!》
《えぇ!?》
《みんなも呼び捨てでいいし、タメでいいよ。それで親しみやすくなるなら》
《・・・わかったよ。維》
──────────────---
『っ~・・・』
今になってボロボロと涙が溢れる。
あの頃の記憶が走馬灯みたいに駆け抜けていった。
「維が居てくれて本当によかったよ。
・・・ありがとう」
憎たらしいくらい微笑む彼に、
鼻を啜りながら答える。
『・・・そういうの嫌だ。涙脆くなる』
「ははっ」
───あの頃は、私の宝物だ。
──────────────---
・・・何故だか、振り向かなくちゃいけない気がした。
氷室と話している最中なのに。
だけど、何故か・・・理由も分からないけれど、振り向いてって全身が叫んでる。
──────・・・、
『っ!!!』
水が、弾けた。
「・・・行っておいで」
そう告げたのが氷室だったのか、それとも私の体の何処かなのか分からない。
だけど、私は駆け出していた。
・・・届かない。
届かない。
どうして、こんなに近くにいるのに────
────あなたが、遠いの