第4章 出逢うことの無かったふたり【火神 大我】
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何度目かの維との入れ替わり。
あの日から氷室に避けられている、
と文句を愚痴愚痴と書かれ、俺自身も心が沈んでいた。
珍しく、目が覚めると机に突っ伏したまま寝ていて、頬が痛い。
『・・・ん?』
ゆっくり体を起こすと、目に入る古文のノート。
そこにポタポタとシミが出来、驚いて頬を触る。
『・・・涙・・・? 何で・・・』
そしてそのノートと言えば、
珍しく書き殴りのような字が連なっていた。
【何かあるなら言って】
【私の体貸してるんだから白状しろ】
【大丈夫】
【私はあんたを見捨てない】
【絶対、全力を尽くすから】
ボタボタと雫が浮かんでくる。
慌てて目元を擦るけどそれは止まりそうにねぇ。
『・・・っ・・・』
こいつ、こんな奴だったっけ。
心が、軽くなってく気がする。
そういえば、最近は練習3倍なってない。
・・・あいつも、頑張ってんのか。
止まらない。
涙が。
何かが、溢れ出すのを感じた。
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「ウインターカップも、もうすぐだなぁ」
「おう。やばいな、緊張するなー」
「・・・全然そんな空気じゃねぇけど?」
・・・確かに。
俺も、もうすぐウインターカップだってのになんで入れ替わりなんか・・・
こんなことしてる場合じゃねぇんだよ俺は!!!!!
・・・あ、そうだ。
『タ・・・氷室、ちょっといい?』
「ん?」
別にこの体だからといって、バスケが出来ねぇ訳じゃない。
しかも、いつかは当たる陽泉に来てんじゃねぇか俺は!
こんなチャンス、無駄にしちゃいけない。
「・・・え、バスケ?」
出来るのか? みたいな顔。
『おう! やろう!』
「いいけど・・・」
困った顔のタツヤ。
体はこいつでも、中身は俺だから。
手なんか、抜くんじゃねぇぞ。