第4章 出逢うことの無かったふたり【火神 大我】
──────────────---
「休憩ー」
「「「ウィース」」」
やることが多いのに、ついボーッとしちまう。
・・・いいなぁ。バスケしてぇ。
アイツに【練習中ボーッとするの禁止!!】って言われたが、どうも動く気にならないときがある。
「・・・維?」
『・・・! あ、俺か・・・・・・何?』
声が聞こえて顔をあげると、そこには少し顔を合わせ辛い男がいた。
『・・・タツヤ』
少し小さめに名前を呼ぶと、困ったように笑う。
そんな顔、見たことなかった。
「ついに名前呼びになったね。
・・・最近、少し変だとは思ってたけど本当みたいだな」
『・・・なぁ、タツ・・・氷室』
立ち上がって、目を合わせる。
こいつの体だからか、向けられる視線が柔らかくて居心地がいい。
『・・・火神、のこと、どう思う?』
自分のことを名前で呼ぶのはなんか変な感じだ。
俺がそう訊くと、タツヤは驚いたようにその端正な顔を歪ませる。
「・・・知ってるのか?」
『・・・っあ、いや・・・っ、知ってる、っていうか、何て言うか・・・』
訊いてから気がついたけど、そういや俺とこいつ(維)に関係なんてなかったんだった。
やべぇ・・・不審がられたか・・・?
「・・・」
う・・・視線が痛ぇ・・・
『・・・べ、別に、答えなくても・・・』
「────怖いよ、あいつが」
・・・・・・え?
次はこっちがビックリする番で、
タツヤの顔をまじまじと見つめる。
怖、い・・・?
タオルで汗を拭いて、一口ドリンクを飲むと、タツヤは口を開いた。
・・・その一瞬が、永遠みてぇに思えて。
「・・・何だろうな・・・変な、優越感に浸ってて。
あいつが・・・弟だって、下に見てたかもしれない」
『っ・・・』
下に、見られても仕方ねぇと思う。
だって確かにバスケはタツヤより下手だったし、タツヤより年も下だ。
だから、タツヤが自分を責める理由なんか・・・
「───ある時、感じたんだ。
《あ、こいつ俺よりも上手くなってる》
って・・・」
俺のことを話しているのに、
どこか懐かしそうに目元を緩ませるタツヤ。
「そう感じた瞬間に、もう遅れてた。
・・・タイガは凄いよ。バスケもだけど、その他も。」