第4章 出逢うことの無かったふたり【火神 大我】
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・・・なんだよ、これ・・・
朝、目が覚めると、制服のままソファーで寝ていた。
夕飯を作った痕跡もない。
朝飯の下準備もしていない。
飯を炊いた痕跡がない。
・・・嘘、だろ・・・
どうなってんだ、これ・・・
「火神くん、おはようございます」
「はよ」
「・・・」
・・・視線?
「・・・何だよ」
訝しいのか何なのか分からない真顔で俺を覗き込んでくる黒子。
俺がそう訊くと、不思議そうに答えた。
「・・・今日は普通ですね」
「おはよう。火神、黒子」
「はよっす」
「おはようございます」
体育館に行く途中、先輩達と合流した。
そんな先輩達もまた、俺をじろりと見る。
「・・・何すか」
「・・・いや、今日は普通だな、火神」
「は?」
何を言ってるんだ、この人達。
「いやー昨日なんてやばかったよな!
火神がとうとう壊れちまった、って」
「は!?」
「練習もすぐへばって、黒子みてぇになってたし」
「はぁ!?」
「伊月のダジャレに笑ってたしな」
「なっ、はぁぁあ!?」
・・・どうなってんだ?
つーか、一体なんの話を・・・
「・・・とにかく」
黒子がパッと告げる。
「昨日の君は、気味が悪かったです」
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「有明月、って知ってるか?」
国語科の教師が問う質問に、答えたやつはいなかった。
アリアケヅキ・・・?
「有明月というのはだな、
時々、昼なのに月が浮かんでいることがあるだろう」
真っ青な空に、薄く浮かぶ月。
夜とはまた違う、別の顔を出すという。
・・・そんな話を、長々とされた。
でも、そんな話も横に流れる。
【ゆい】
・・・?
誰だ?
腕に書かれた謎の名前。
俺とは違う丁寧な字で、油性ペンで腕に小さく書いてある。
・・・ゆい?
・・・そういや、何か長い夢を見ていた気がするけど・・・覚えてねぇ。
何かの夢だった気がすんだけどな・・・何だったけな・・・
ふとページをめくると、真っ白なノートに、
【あなたこそ誰よ】
と記してあった。
・・・ん?