第4章 出逢うことの無かったふたり【火神 大我】
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「・・・ただいま~・・・」
気力がなくなった声が、誰もいない虚空をさ迷う。
「・・・ふぁぁぁ・・・眠い」
何かご飯を作るやる気さえ出てこない。
今日は食べなくても、いいかな?
「ま、いっか。夢だし」
・・・そういえば。
本当に、本当にリアルな夢だ。
人の声もリアルだし、流れる汗も動く足もリアルだった。
最近の夢は、進化してきているのかな。
・・・あ、お風呂どうしよう。
・・・入らなくてもいっか。夢だしね。
─────お前は誰だ?─────
「あっ・・・」
ふと横切った言葉。
ペン類が仕舞ってある棚から油性ペンを取り出して、腕に直に書く。
【ゆい】
明日は、どんな夢だろう。
そう言えば、先生が【有明月】とか言ってたな。
月が残ったまま夜が明けること。
夜が明けても月が見えること。
窓から見える丸い月は、東京のビル群にはあまり似つかわしくない。
だけど、それでも輝いていた。
・・・東京ライフ、楽しかったな。
部活は大変だったし、道にも迷ったけど、それでも楽しい思い出には変わり無い。
この男の子は、どんな子なんだろう。
高校一年生だから、私より二個も年下。
だけど、何だか親近感が沸くなぁ・・・
まぁ、夢だからきっとまた会えるだろうし、会えなくても忘れないだろう。
今はそう、思っていたいなあ。
猛烈に襲ってきた眠気に、私は抗うことなく瞼を閉じる。
きっとまた・・・見れる夢だよね・・・
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