第4章 出逢うことの無かったふたり【火神 大我】
「・・・火神くん」
「・・・え、私?」
「・・・・・・【私】?」
怪訝そうに見つめられる。
・・・可愛い人だなぁ・・・
「ま、まぁいいわ。
それより! 何でサボったのか説明して貰おうかしら・・・?」
「さ、サボった?」
見渡すと、向けられる殺気と怪訝。
「・・・リアルな夢だなぁ」
「は? 夢?」
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「・・・火神くん」
「ぎゃぁぁあ!? え、え!? 誰ッ!」
「・・・そんなに驚かなくても」
先輩達に何故かこってり怒られた後、罰として体育館全体のモップがけをやらされるはめになった。
っていうか、誰なのこの人!?
「い、いや・・・驚くよ普通・・・」
「・・・そんなことより。
何だか今日の君は変です。別人みたいですよ」
「へ、変?」
ていうか、誰なのこの人は・・・。
「まずシャキッとしてください」
「シャ、シャキ?」
「それから眉間に眉を寄せて」
「み、眉間?」
「そして【おら、黒子遅ぇよ!】です」
「お、おら?」
「そんなんじゃないですよ。もっと大きな声で!」
「・・・おら! 黒子遅ぇよ!!」
そうですそうです。
色々と色素の薄い少年は、満足げに立ち去っていった。
・・・え? てか、本当に誰だったの?
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「ほら!!! もっと足上げて!
ここでへばってたら試合で保たないわよ!!」
・・・・・・ま、待って・・・
「おらぁ火神!!
もっと声出せ! 足に力入れろ!!!」
・・・・・・き、・・・キツい・・・
「はい、じゃあ休憩ー」
そんな声も意識の片隅でしか受け取れない。
取敢えずドリンクをがぶ飲みして、タオルで滴る汗を拭った。
「・・・火神、大丈夫か?」
隣に、さらさらの黒髪くんが立つ。
おぉ・・・イケメンは汗だくでもイケメンなのか。
「だ、大丈夫・・・す」
「無理すんな。何か今日具合悪いんじゃないか?」
座るよう促されて、取敢えず腰かける。
「無理すんな」のたった一言で、気が軽くなったみたい。
「ハッ! 体調が悪い隊長!キタコレ!!!」
「は、はは・・・」
な、なんでこんなに元気なの・・・?
この学校の人達は、バカ体力の持ち主ばっかだ。