第3章 記憶の中の彼女【赤司 征十郎】
赤司side──────────---
俺は嫌われてしまったね
信号の赤のランプが煌々と光る。
歪んだ世界の中で、それは頼りなく見えた。
「・・・本当は、大切なんだ」
本当も何も、無いけれど。
彼女の【好きです】が、頭の中をリピートする。
「・・・俺も好きだ。情けないほどに」
ハンドルに頭を預けて、項垂れた。
信号が青になった気がしたけれど、後ろに車はなかったから少し気休めをする。
「・・・どうすればいい」
彼女の横に置いておいた手紙。
俺の精一杯の気持ち、本音だった。
彼女の首筋に残る内出血の痕は、付けた俺を罪悪感に沈ませた。
謝罪の言葉以外、思い浮かばない。
性的暴行として訴えられても仕方がない。
俺はそれくらいのことをした。
だからもう、彼女とは─────
───先生?───
───先生て、恋するんですか?───
───ちょ、赤司先生!───
───・・・先生、好きです。───
───先生!────
『───先生の、バカ!!!!』
窓ガラスが規則的に揺れる。
窓の外で、彼女は鬼の形相をしていた。
・・・正直、驚いた。
とりあえず車を路肩に止めて降りる。
その瞬間、彼女の平手打ちが頬を叩いた。
『っ先生のバカ!!!! アホ!!!!
さいってー! 信じらんない!!!!』
浴びせられる罵声の数々。
それを聞いても、俺は何も返せなかった。
『ほんと・・・信じらんない!
・・・私、だって、』
「・・・!」
滴る涙。
それを拭う権利なんか俺にはない。
『・・・・・・っ、先生は本当にバカ!!!!
わ、私、だって、・・・っ、先生に、恋しちゃう、し・・・っ
し、仕方ないじゃん・・・』
途切れ途切れの言葉は俺の心にストンと落ちる。
『・・・好きになっちゃった、から』
・・・あぁ、もう。
どうして君はそうやって・・・
・・・俺の心を掴んで離さないんだ。