第3章 記憶の中の彼女【赤司 征十郎】
維side───────────---
不意に立ち止まった先生。
先生が止まったことによって思い出したけど、私たち普通に一緒に歩いてたんだ・・・
『・・・先生?』
広がった隙間。
白く清潔な床の色が、空白の色だ。
何だか少し、寂しい、かもしれない。
『・・・どうしたの、せんせ───』
────宙に回るような感覚。
先生の重みで重力が大きくなって。
私の体は世界の中心に引き寄せられた。
ピシャッ、と、ドアが閉じる。
それと同時に前髪が揺れて、意識が現実に引き戻された。
・・・私、倒された?
・・・何で、先生が?
・・・なんのために?
ドアを閉めた先生のその顔は見たこともない顔。
・・・あなたは、誰なの?
「・・・すまない、柚井」
『っえ?』
「・・・俺は、もう」
誰もいない空間で、鍵が閉まる音だけが響く。
その瞬間心臓がバクバク鳴り始めて、脳みそがフル回転してきた。
『な、何言ってるの先生?』
「・・・すまない」
『だから何・・・っひ・・・っ!?』
首筋から下りるように撫でる掌。
先生が触っていったところから熱が発生して、息が苦しい。
『な、何・・・っやめ、・・・っふぇ!?』
耳を噛む唇が熱い。
体のラインを撫でる掌が熱い。
・・・あなたは、誰?
見たこともない人。
男の人。
でも、先生。赤司先生。
・・・嬉しい、筈なのに。
心臓がうるさくて、息が苦しくて、
・・・怖い。
『・・・やめ、やめて・・・っいぁ・・・っ』
首筋に走る電撃。
紅く灯ったそれは、じわじわと全身に熱を伝える。
痛い、痛い。怖い。
誰? 先生? 誰なの?
『・・・っ先生・・・っふぁ!!』
制服の内側に忍び寄る掌。
涙が零れて、溢れて
先生の香りで一杯になって、
嬉しいのに、ドキドキするのに、
・・・怖い。
『先生! 先生・・・っ』
朦朧となっていく意識。
そんな中で私は、必死に何かを言っていたような気がする。
────・・・先生、好きです。
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次に目が覚めるのは、どこかな?
先生の腕の中かな?
そうだとしたら・・・
あの優しい先生がいいな。