第3章 記憶の中の彼女【赤司 征十郎】
──お金入れてって!──
・・・て、何だそれ。
客に対して何という言葉。
ったく・・・しかもこっちは年上だ。
何を考えているんだ、全く・・・。
「せーんせいっ? 何不機嫌そうな顔してんのー?」
「・・・何でもない」
「えーっ! 何それーっ!」
・・・別に不機嫌ではない。
チラッと目配せしたが、こちらには気づかず。
またもや看板を振り回して大声を張り上げている彼女。
・・・別に、柚井が来ないから不機嫌な訳ではない。決して。
「何なのーっ? 私じゃダメーっ??」
「・・・俺は誰かで満足するような男じゃない」
「ははーっ! 先生おっかしー!」
・・・てか、誰だ君は。
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維side
「ははーっ!」
突然響く笑い声。
ちょ、ちょっと・・・廊下にまで響いてんですけど・・・
ガン飛ばそうと思って教室を覗くと、何故か不機嫌そうに座る先生の横に、クラス1の美魔女が座っていた。
・・・確かあの子も先生の事狙ってたな?
『・・・モテモテじゃん先生・・・はぁー』
・・・私、勝ち目無いし。
「・・・あのー?」
『っあ、はい! 何でしょう!』
耳を叩いた声に敬礼をして振り向く。
友達に「敬礼やれ!」と言われていた。
「ここって、カフェだよね?」
『そうですそうです!』
うわぁー・・・チャラそう・・・
いや、人を見た目で判断しちゃいけないと言うけど流石にこれは・・・。
いかにも軽そうなネックレスとピアス。
ダサい腰パンで、ポケットに手を突っ込んでヘラヘラ顔。
男ならシャキッとしなさい! シャキッと!
「メイドカフェみたいな?」
『あ、いえ、店員がコスプレしているだけでそんな感じでは』
「あーそうなんだー・・・」
え、何? 何なの? 何がしたいの?
「・・・ね、ご指名は君じゃダメ?」
『は? あ、いやホストなんかじゃ・・・』
つか【ご指名】って何だよ。何なんだよ。
「えー、残念。こんなに可愛い子が接客してくれたら嬉しいのになぁ」
全然残念そうじゃないですよね。
そんな本音は飲み込みつつ、伝授された営業スマイルを張り付けようと試みた。