第3章 記憶の中の彼女【赤司 征十郎】
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『どうぞ入ってくださーい!
冷え冷えのジュースありますよー!』
もうこうなったらヤケだ。
『はいはーい!!
押さないで並んでくださーい!!!!』
ヤケだ。
『どうぞ入ってくださーーい!!!!』
・・・ヤケだ。
ミニスカなんかお構い無しに仁王立ちで客を迎える。
持っている看板をぶんぶん振り回して、声を張り上げる。
お金・・・お金のため!
そして今までの努力のため!
ここで張り切らないで何処で張り切ると言うんだ!
もう今までの私とは────
「・・・」
『・・・』
「・・・看板を振り回すのは良くないな」
『・・・っし、失礼しました!!!!』
バン! という音と共に沸き上がる冷や汗。
・・・よりによって赤司先生に当たるなんて・・・
「・・・へぇ、コスプレか」
『・・・あ! 良かったら先生もどうぞ!
さっ、早く入って! お金入れてって!』
「・・・本音駄々漏れだな」
お邪魔するよ
という声と同時に沸き上がる歓声。
どうよ、先生モテるんだからね!←
───こうして(?)、
私の高校最後の文化祭は過ぎていく。
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赤司side
カフェ、お化け屋敷、ダーツ・・・
ふむ、沢山あるものだな。
こういう雰囲気も悪くない。
「・・・ん?」
この声は・・・
『どうぞ入ってくださーーい!!!!』
・・・やっぱり・・・
聞こえた彼女の声に、微笑が零れる。
・・・というか・・・
「・・・なんだあの服」
ミニスカート・・・短すぎじゃないか?
スリット入りか・・・正直言うと危なっかしいな。
スカートなのに仁王立ちだし。
「やぁ、────」
・・・
『・・・』
「・・・」
・・・いたっ
「・・・看板を振り回すのは良くないな」
『し、失礼しました!!!!』
しゅばっと頭を下げられる。
その俊敏さは本物の警官のようだ。