第3章 記憶の中の彼女【赤司 征十郎】
え? 先生を好きかって?
そりゃ好きだよ。大好き。
・・・知ってる。
先生が遠い存在だって事は。
とっくの昔から知ってるよ。
だって、モテモテだし。
肌白のくせに筋肉あるし。
女の子が大好きなタイプでしょ?
でも、仕方ないじゃん
『・・・気づかないの? 先生・・・』
好きになったんだから。
「・・・何か言ったか?」
『え、いや、何にも!』
「? そうか」
好きだからこそ嘘をつく。
女の子ってそういう生き物なんだよ。
好きになっちゃいけない、
諦めなきゃいけない、
そう分かってるから。
自分を守る為に、相手を守る為に、
こうやって今日も嘘をついていく。
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「・・・バスが四時頃に到着するから・・・」
あー・・・近い。
「・・・そしてパイプ椅子の数も変更で・・・
・・・柚井?」
先生、近いよ。
髪の毛のさらさら具合がバッチリ見える。
「・・・聞いてるか?」
『・・・っ! あ、はい! すみません』
あ、
危なかった・・・。
アホ面見られた。絶対見られた。最悪。
「・・・熱あるんじゃないか?
そうなら保健室まで付き添うが」
『ぶっ!?
え、いやそれはどうも、何かダメですよ私まだあれですし、先生が来たら何か地球破滅しますし!!!!?』
異常なまでの慌て様。
自分でも苦笑だわ。いや失笑?
【保健室】ってワードは心臓に悪いよ・・・
そういや、夢の舞台も保健室だったっけな・・・
『・・・先生』
振り向く動きも優しい。
その笑顔も、声も、
全部全部、私にとって毒なの。
『・・・先生て、恋するんですか?』
貴方の想い人は違う。
知っているけど・・・それでも仕方ないじゃない。
大好きになっちゃったんだから・・・
「・・・あぁ。したよ」
【したよ】。
どうして過去形なの?
どうしてそんな悲しそうなの?
どうして・・・私・・・、
『・・・いきなり、ごめんなさい』
・・・心臓が痛い筈なのに・・・
涙の一粒すらも、流れないの?