第1章 似た者同士は惹かれ合う?【花宮真】
「・・・!」
そいつの肩をガッと掴んで、
歩みを止まらせた。
これは教師としてじゃない。
ひとりの、人間として。
「あ?」
『・・・馬鹿はどっちよバカ!!!!!』
「!?」
頭に血が上ってる。
ここは学校、しかも廊下。
職員室だって目と鼻の先だ。
こんな風に怒鳴ったら、
私が解雇されちゃうんだろうな。
でも、ダメなの。
こいつには、言わなきゃいけないの。
仕事柄、命の脆さも儚さも知ってきた。
どっちが上か下かなんて知らない。
そんなの無い。
隣に立ってるんだよ。
『今は教師とか生徒とかじゃない、
ひとりの人間としてあなたの言葉に傷ついたの!
見えない傷の方が癒せないんだよ・・・
・・・ちゃんと、分かってんの・・・?』
そこまで怒鳴って、気がついた。
私、傷ついてたのか。
「・・・」
気づけば俯いていて、
年上としての威厳の欠片もない。
見える傷は、私たちが治すことは出来る。
でも、
『・・・傷つけてからじゃ遅いんだよ』
見えない傷は、一生かさぶたのまま。
それか血が流れ続けるまま。
どんなに悲惨な傷だったとしても、
それは私たちには癒せない。
・・・それが、悔しいのかな?
私は、それが悔しいのかもしれない。
「・・・クソ」
『あ!?』
またこいつ失礼な・・・っ
『っえ!?』
腕を引かれて体育館を抜けて。
とある場所に放り込まれる。
どこ・・・ここ。
・・・・・・ん?
・・・《男子バスケットボール部部室》?
『・・・は?』
「お前バカかよほんとに」
『は!?』
変化球が堪忍袋の緒を切る。
もう沸騰していた。お湯が沸けてる。
「あんなとこで怒鳴ったらお前の方が危なくなんだろうが。アホか」
『・・・え』
え、心配・・・してくれたの?
『・・・・・・いやいやでも怒鳴らせたのあんたでしょ。』
「あ"?」
めっちゃ睨まれたけど全然別に怖くない。
うちの父さんのほうがちょっと怖い。
『・・・とりあえず。
学年と名前教えなさい』
「・・・2年、花宮真」
『あーはいはい、花宮まこ・・・
・・・花宮真!!!?』
あの優秀生徒だって褒められてる花宮真!?
え、信じられない・・・。