第2章 そんな毎日が幸せだった。【伊月 俊】
「あ、ごめん俺だ。ちょっと待って」
携帯を手にとって車外に出る先生。
・・・日向先生?
「あー・・・うん。そのうちな。
・・・え? カントク? ・・・知らないけど」
・・・カントク?
・・・何かスポーツやってたのかな。
バタンと閉まると同時に伝わる振動。
『先生何かスポーツやってたの?』
「うん。バスケ」
・・・初耳。
バスケなんて出来たんだ・・・。
『バスケなら、うちのお父さんもやってたよ』
「へー・・・なんのポジション?」
『センター、って聞いたかも』
「マジか。でかいんだな」
『うん。2メートル』
本日2度目のマジか。
しかも今度は苦笑混じりだった。
そんな姿も、なんだか新鮮。
・・・それが、嬉しかったり。
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またまた広ーーーーい家に到着。
帰ってゆっくりできるかと思ったのに、まさかのチャイム。
先生は怠そうに立ち上がった。
「はーい・・・、・・・え。なんで・・・」
『?』
驚いた様子で扉を開ける先生。
その先には、茶髪の・・・綺麗な人。
「なんでって・・・日向君に頼まれたのよ。
また料理簡単に済ませてるだろーって」
「え、だからって何でカントクが・・・」
「私のプロテイン入りカレーを、」
「いい! マジでいいから!」
えー!
楽しそう(?)に話す二人。
カントクって・・・あの人だったんだ。
『・・・先生、見たことない顔』
ジャリ、と。
何かを噛み潰したみたいな感覚。
ドクドクと血が熱くなってく。
「とにかく! 上がらせてもらうわよ!」
『!!!!』
「ちょ」
慌てて部屋に飛び込む。
影からスッと覗いてみるけど、気づかれていないみたいだ。
・・・ああいう風に、こんな綺麗な女の人を招いてるんだな・・・
・・・なんだよ先生。
・・・期待、少しだけしちゃったじゃんか
・・・なんだ。
・・・先生にとってはこんな事・・・。
ダッと踏み込む。
廊下を走って、
玄関に駆け込んだ。
靴を履き潰して、外に飛び出す。
後ろで声が聞こえたような・・・聞こえなかったような。
どっちにしても、私はなんだかモヤモヤしていた。