第2章 そんな毎日が幸せだった。【伊月 俊】
維side──────────────
『・・・なに、これ』
カーテンから朝陽が差す時間。
くるまる羽毛布団はひんやりしてる。
・・・だけど、そんな事どうでもよくなるくらい・・・
『・・・こんなの・・・、
年頃の女にとっては毒だよ・・・』
隣で規則的に動く肩。
さらさらな髪。
例え、先生が寝惚けていたとしても・・・こ、この体勢は・・・キツい。
『せ、先生。先生!』
どんどんと胸板を叩く。
目の前に映る肩はぴくんとなって、モソモソと動いた。
後ろに回される腕が暑い。うん、暑い。
どうにかしないと・・・
『せ、ちょ、先生! 起きてよ!』
「う、ん・・・?」
『ん? じゃないの・・・!
起きてよ・・・』
あぁ、嫌だ。
私今、絶対真っ赤。
「う、・・・ん~・・・・・・っいた・・・」
バチコンと額に一発。
いい音がして、かました私も気分がいい。
『起きてください』
「あーうん・・・・・・ってええぇ!?」
ガダァン! と落ちる立派な大人。
ちょっと・・・教師・・・。
『落ちたいのはこっちなのに・・・』
「あ、ごめん。もしかして・・・」
『いや別に何もされてないけど・・・。
ワイシャツ、大丈夫? シワとか・・・』
「あー大丈夫。今日休みだから」
『え?』
「今日有休取ったんだ。荷物、取りに行こう」
頷くことしか出来なかった私は、一瞬・・・ほんとに一瞬だけど、先生の傍に行きたくなった。
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都会の喧騒を進んでいく。
流れていく景色が綺麗で、
とても汚れた街には見えなかった。
だけど確実に、ここには汚い世界だってあるんだ。
『あ、着きました』
「・・・え、ここ?」
うん。
お礼を言って、車を降りる。
どうせ来月には帰ってくるから、洋服とかだけでいいや。
『えーっと・・・後は、無いかな』
「結構、広いな。なんか、懐かしい感じ」
『え、うわぁ!? なんで上がって・・・
・・・え? なんで懐かしい、の?』
ふっと笑った先生は、首を横に振る。
何でもない、ってこと?
・・・つくづく、謎が多い人だ。
「もうない? 行ける?」
『うん、大丈夫。』
・・・ピリリリリリ
『!!!!』