第2章 そんな毎日が幸せだった。【伊月 俊】
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『先生、お風呂上がった』
「おー分かった・・・っ!?」
『?』
タオルでゴシゴシしながらテレビの前に座る。
なんだかもうすっかり慣れてしまった。
「じ、じゃあ、俺行ってくる」
『はーい』
・・・なんか様子変じゃない?先生。
『・・・何にも面白いのやってないや』
電源を切ってスマホを見つめる。
電話だって来る筈ない。
忙しいから、ふたりとも。
仕方ない。しかたないの。
だけど、なぁ・・・。
『お金が少なくたっていいから・・・
また昔みたいに笑いたいなぁ・・・』
液晶に浮かぶ水滴は、
水なのか、涙なのか。
それとも、お風呂上がりの汗かな。
何にせよ、今の私には武器にもならない。
弱っちいな。
こんなんだからママたち離れてったんだよ。
目元を擦って言い聞かせる。
強くなんなきゃ。
『・・・強くなって、喜ばせないと』
そんな声を、
彼は黙って聞いていた。