第2章 そんな毎日が幸せだった。【伊月 俊】
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野菜炒めと、野菜スープ。
野菜を愛する私にとって、最高の晩飯だ。
『・・・先生、出来たよ』
コンコンと乾く音。
広い部屋には特に響いた。
『・・・? 居ないの?』
「・・・居る居る」
『ひぎぁぁぁぁあ!?』
いつのまにか目の前に居た先生に悲鳴しか上がってこない。
『おど、おおおおおおど、驚かさないでよ!!』
「いやこっちこそ」
そう言って笑う先生。
眉を傾けて笑う姿に見入ってしまった。
『・・・! で、出来たから早く食べよう』
もうこの気持ちがなんだか分かんなくて、取敢えず先生を引っ張って座らせた。
誰かと一緒のいただきます。
声が重なるのが面白い。
「うん、美味い」
『え、ほんと?』
「うん、ほんと。俺こんなの作れないから」
『いつもどんなの食べてるの?』
「んー・・・軽いものだな。
カレーとか、ラーメンとか」
『ラーメン作れるの?』
「インスタントな」
『あーそっち』
食事中の会話だって、面白い。
話しかけたら返ってくる。
笑いかけたら返ってくる。
キャッチボールみたいだ。
『あ、先生。数学教えて、今日のとこ』
「あー・・・特別だからな」
『ラッキー』
それが先生だからなのかな。
何かに包まれたみたいに、心が軽くて落ち着いていく。
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《パパの料理は世界一だね!》
[おー、そうか! パパは幸せ者だな]
[やだー維。ママは?]
《ママのオムライスは世界一!》
[オムライスだけなの!?]
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昔は・・・そう言って笑ってたのに。
今じゃ、仕送り以外は何も無い。
手紙でさえ、一通も。
私、どこかで間違えたかな。
ふたりが仕事の方が好きになっちゃったから、仕方ないのかな。
ママもパパも大好きだから、
応援しなきゃいけないよね。