第9章 言い過ぎじゃないっスか?【黄瀬涼太】
「‥‥‥嫌だよ‥‥、今日みたいに、涼太がつまらなさそうな顔してるの見るの‥‥」
「私‥‥いつも素直じゃなくて、涼太のこと構ってないから‥‥飽きられたって‥‥」
‥‥‥そんなこと考えてたんスか。
バカだなぁ‥‥。
「‥‥‥飽きない。維っちが俺のこと好きでいてくれるうちは、絶対」
「私が涼太を飽きるはずないじゃん!」
「わかんないっスよ~?」
むくれる維っち。
でも、本当のことだから。
それは、明日かもしれない。
明後日かもしれないし、来週かもしれない。
でも、俺から手放す気なんか全く無いっスけどね。
この人以外なんて、知りたくもない。
「じゃあ、このまま一緒ってことでいいんスよね?」
「うん‥‥」
「おいで、維っち」
「っ‥‥」
のそのそと近づいてくる維っち。
辛抱強くない俺は、先に抱きついてしまった。
「っ‥‥‥っ~‥‥」
「‥‥ごめんね、つまらない訳じゃないんスよ」
「っ‥‥じゃあ、なんで、さっき‥‥」
「‥‥それは‥‥」
馬鹿馬鹿しいとか思われないっスかね?
結構ねちっこいから、俺。
「‥‥‥維っちがテレビに出てる奴ばっか褒めるから‥‥」
「‥‥‥え」
あ、困ってる。
声色でわかるっスよ、何年も一緒にいるんだから。
「女々しいとか、言いたいだけ言えば?」
「‥‥ぷっ‥‥」
「へ?」
吹き出したかと思えば、むぎゅぅぅぅっと抱き締められる。
維っちからこんなに抱き締められたの、初めてだ。
「‥‥‥っあはは‥‥っ、ごめん‥‥」
「何なんスか、もー」
こっちが恥ずかしくなってきたっス。
「‥‥ふふ‥‥‥涼太以上にかっこいい人なんて、いないよ」
「‥‥‥でも」
「ごめんね、本当に。
涼太のこと、いっつも心の中では褒め倒してるんだよ」
褒め倒してる!?
「い、言い過ぎじゃないっスか?」
「そんなことないよ!
涼太が帰ってくるの待ち遠しいし、
早く会いたいし、
ずっとくっついてたいし、
お風呂だって一緒に入ってみたいし‥‥」
‥‥‥赤裸々‥‥、こっちが照れる。
「お風呂も一緒がいいんスか?」
「それは‥‥‥私の準備ができたら‥‥」
「ははっ」
「‥‥笑わないで」
「ははっ、可愛いっスね、世界一」
どんどん赤くなる維っちの頬。
どこまで可愛いんスか‥‥