第9章 言い過ぎじゃないっスか?【黄瀬涼太】
ま、維っちには、言ったところで多分困るだけだろうっスから。
言わぬが仏っスよ。
───────---
「───ぷはぁ~~っ」
極楽ぅ‥‥。
湯船に浸かりながら、頭の中は維っちのことでいっぱいだった。
この後何して遊ぼうかとか、何のアイスを一緒に食べようか、とか。
同棲してよかったことは、やっぱり四六時中一緒に居られる所っスよね!
「‥‥ふはあ~‥‥」
「ね、ねぇ、涼太」
「ルドッフゥ!?!?!?」
ゆ、維っち!?!?!?
え、どうした!? 俺、なんかしたっけ!?
お風呂のドアの向こうで、維っちがしゃがんでいるのが影で分かった。
「なんかあったっスか?」
「ち、違うの‥‥あのね」
「?」
あ、一緒に入りたいとか?
それなら全然大歓迎なんスけど──
「一緒に住むの、やめる?」
─────え?
‥‥‥は?
「‥‥やめる?」
それ、今話す?
いやいや、そこじゃなくて‥‥
「なんで、っスか」
「なんか‥‥最近の涼太、私と居てもつまらなさそうだし‥‥一人で居たいときだってあるんだろうなあって」
‥‥そんなわけ、
「だから、別れるとかじゃなくて、ただ、一緒に住むのやめるくらいなら、どうってことないかなって‥‥いや、どうってことあるけど‥‥」
‥‥‥はは‥‥っ、
「‥‥そんな大切なこと、ここで話すんスね‥‥」
「あっ‥‥ごめん、出直す!」
「いや、いいっスよ。維っちらしくて」
「?」
「維っち。お風呂上がるまで待ってて」
「え‥‥うん」
──────---
風呂から上がると、リビングで正座をしてテレビを見ている維っちがいた。
‥‥いつ見ても愛くるしい‥‥。
「維っち」
「! あ、涼太‥‥」
パッと振り向いたその顔は、泣きそうな顔に見えた。
こんな顔、初めて見た。
「‥‥あの、あのね、さっきのは、」
「俺は一緒に居たい。あんたは?」
「!? っ‥‥私も‥‥」
‥‥‥あれ、黙っちゃった。
試しに頭に手を置いてみると、ポタポタと涙が溢れ落ちた。
‥‥泣くことないのに。
「泣いてちゃ分かんないけど?」
「‥‥涼太‥‥私だって一緒に居たい‥‥けど‥‥」
‥‥けど?