第2章 そんな毎日が幸せだった。【伊月 俊】
今は昼休み。
大体は購買に出払っていて、教室は閑散としていた。
そんな中で、突っ伏す影。
・・・柚井?
「・・・本当に起きないのか・・・」
これは担任として少し気掛かり。
窓際まで近づいて、顔を近づけた。
『・・・んっ・・・いや、まだ・・・』
・・・?
『ちょ・・・それ・・・おやつ・・・』
・・・??
『・・・私の・・・だから・・・っ』
・・・寝言?
時折、パタパタと足を揺らして
柚井は ふやぁ と笑う。
・・・爆睡か。
───バクが爆睡!
『・・・ん~・・・寒い』
なぬっ!?
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取敢えず、肩を叩いて起こした。
寝ぼけ眼で、保健室への足取りも危なっかしい。
それが少し、微笑ましくなってしまった。
「ほら、着いたぞ。寝るならここで寝ろ」
『ん~・・・』
促した瞬間、布団にくるまって寝息をたてる彼女。
そういや柚井は一人暮らしか。
両親がアメリカで、彼女は日本。
・・・火神みたいだな。
仕送りの他に送られてくるものは無いから、夜遅くまでバイトの日々だとか。
「・・・柚井、頑張ってるんだな」
さっきまで心地好さそうだった寝顔が、途端に暗く染まる。
『・・・ま・・・ママ・・・、パパ・・・』
「!!」
高校生と言ってもまだ子供。
不安な部分ばかりだろう。
少し額を撫でてやると、
暗かった顔は眉を上げる。
『・・・ふふっ・・・おか、えり・・・』
「・・・ふっ・・・パパじゃないからな?」
愛しさが募っていく。
守りたい。
彼女を、この手で。