第2章 そんな毎日が幸せだった。【伊月 俊】
伊月side─────────────
あ、また寝てる。
そう思うのは、今日何度目か。
窓側の最後尾、風が吹く席。
カーテンが彼女の周りを包んで、
その心地よさを表している。
俺しか、見えない景色。
「それで、このaに出た答えを代入して・・・それをxに代入する形」
チョークでaを書いて、
その下に数字、その横にxを書いた。
この高校で教師をやって早数年。
得意だった数学で教師として働いている。
ちなみに、数学Ⅰ。
維は、数学の中でも特にこれが嫌い。
だから、毎回毎回寝ている。
・・・毎回《まいかい》寝ている、いかとかい!
・・・授業中だけどキタコレ・・・ッ!
今日は数学が2回。
この数学Iと、数学A。
数学Aは担当じゃないけど、時々担当。
それが今日だった。
だから、午後にもう一回。
たったそれだけのことが、
物凄く嬉しいんだ。
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「おーい、伊月~」
「ん? あぁ、日向か」
同じくこの高校で歴史を担当している日向。
結構イジられてんだよね、日向。
はっ、日向は優雅!
「・・・またくだんねーこと考えてたんだろ。・・・まぁいいや」
ん?
いつもみたいに突っ込んでこないのか。
「お前のとこの柚井、今日一日中寝てんじゃねえの?」
「? 柚井が?」
他教科の教師からも評判がいい柚井。
もちろん、俺や日向からも。
そんな柚井が、ガッツリサボり?
・・・ツリーがガッツリサボってる・・・
「んー・・・様子見た方が良いんじゃねぇの」
「・・・分かった。見てみる」
どうしたんだよ、柚井?