第8章 シンデレラになりたくて。【灰崎 祥吾】
「俺だって、そそられる女とか、誰かの女にしか近づかねぇよ。なんも意味なく近寄るかっての」
「‥‥そう、なの」
「俺がなんで髪染めたのか、いちいち言わねーと分かんねーのかよ」
「え?」
「‥‥お前の、驚いた顔、見たかったからだよ」
「‥‥へぇ」
へぇ、て。分かってないな。
涙で濡れている頬を撫でる。
その瞬間、維の顔が一気に熱くなった。
「お前さ、俺のものになんねェ?」
「‥‥‥へ?」
髪を撫でる。
瞬きもしていなかった両目から、ボロボロ涙が流れていく。
面白ェ‥‥。
「え、な、え‥‥っ」
「人が告ってんのに目ェ逸らすのかよ」
悔しくなってこっちを向かせた。
顔中が赤い。熱い。
「だ、だって、私‥‥っ、え、灰崎‥‥中学の頃、そんなこと一度も‥‥」
無ェに決まってんだろ。
俺は、今のお前にしか興味ねェ。
「‥‥なんつーの? あれだよ‥‥好きってやつだよ」
「‥‥‥そんな、ええっ?」
顔赤っ。そこまで赤くなるもんなんだな、顔って。
維は、信じられないとでも言いたげな顔で後退りした。
「逃げんなよ、おい」
「逃げてな‥‥」
「逃げてんだろ‥‥ったく」
「っ、う、わぁ!?」
担ぐ。
そしてそのままベッドに放り投げた。
「っ‥‥」
「早く返事言わねーと、このままヤるからな」
「ちょ、ダメダメダメダメ‥‥」
「ダメじゃねーだろ」
ここからの眺めは最高だった。
早く言わねーとマジでヤるぞ、ちょっとヤベェから今マジで。
首をなぞっただけで跳ねた肩。
もう無理だ、とそいつのズボンを下げようとした瞬間───
「わ───私だって‥‥好きだよ──」
──待ち望んでた、答え。
もう笑わずにはいられなかった。
そのままキスをする。
うっすら目を開けると、エロい顔がすぐ傍にあった。
‥‥クソ‥‥ッ、
「‥‥っ、おい、鼻で息しろよ」
「‥‥仕方‥‥わかんな‥‥っ」
「はァ? はじめて? お前」
「‥‥‥悪い‥‥?」
俺でいいのか?
「お前‥‥はじめて俺でいいのかよ」
「‥‥‥ダメだったらキスも許してないから」
‥‥‥ははっ、あーそう‥‥
「じゃあ、貰っていいんだなァ?」
「‥‥いちいち訊かないでよ」
ヤベェ、エロい。