第8章 シンデレラになりたくて。【灰崎 祥吾】
「あのなァ‥‥迂闊に男に合鍵なんて渡すんじゃねーよ‥‥バカが」
「‥‥だから、灰崎なら、」
「それがダメなんだって言ってんだろォ? あァ? 維ちゃんよォ」
「口悪‥‥」
もうただのヤンキーにしか見えない。
カツアゲって、こういう気持ちになるんだね。
「俺ほど危ない奴はいねーだろ。
ストーカーでもされたらどうすんだよ」
「え、灰崎、しない、よね」
「しねーけど」
ほら、よかった。
てか、早く行きたいんだけどね?
「‥‥でも、俺以外にこんな事すんなよ‥‥してたら犯すからな」
「はっ、」
「ほら、はよ行け」
「うわっ、と」
背中を押される。
外気が頬を掠めていった。
「じゃーな」
「う、うん」
いつもは凍えながら閉めるドア‥‥なのに。
なんだろう、灰崎のマフラーのおかげ?
全然、寒くないみたい。
────いや、やっぱ寒い!!!!
「ぶえっくしょぃぃ!!!!」