第8章 シンデレラになりたくて。【灰崎 祥吾】
「じゃあ、お風呂入ってくるから。
大人しくしててね」
「犬かよ、俺」
そんなことないけど、まぁ、獣ではありますよね。
あんなにデカイ獣、私には世話できない。
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「‥‥って」
洋服そのまんまじゃん。
畳みなさいよ。レジ袋にでも詰めなさいよ。
男の人の下着とか、見たくもないのに。
普通に置いてあるんですけど。
「‥‥あれ、そういやさっき、灰崎下着つけてたよね‥‥? コンビニで買ったのか?」
最近のコンビニはすごい。
普通にそういうの、売ってるんだもの。
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「───灰崎ー」
「あ?」
「荷物。はい」
「あー」
なに「あー」って。
他になんか言うことないんかい。
「じゃあ早く寝るよ。明日も私バイトだから」
「冬休みなのにご苦労さんだな」
「お金のためだから」
困ったな、布団無いな。
なんだかもう、考えるのも面倒になってきた。眠いのよ、もう。
「‥‥灰崎、はい」
「あァ?」
「布団。入って」
「‥‥なにお前、誘ってんの?」
「違う。眠い。早く」
「‥‥ッチ‥‥」
もそもそと布団が揺れる。
いつもより大きく軋んで、感じたことの無いような重みがあった。
「お前‥‥」
「‥‥‥」
‥‥なんか、すごく‥‥安心する。
クリスマス効果なのかな?
幸せのような気がする‥‥。
「───お疲れさん」
久しぶりの、部屋に響く誰かの声だった。
‥‥灰崎が来てくれて、よかった。
灰崎に会うまでは、なんだか、今日は眠れなさそうって思ってたから。