第7章 人は見た目で決まらない【原 一哉】
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そして、またとある日。
「帰るぞ~」
「うん」
当たり前のように私の前に現れる。
別に、来なくてもいいのに。
部活で疲れてんだから、わざわざ来なくたっていいのに。
でもそれを言おうとは思わない。
なんだか、めんどくさそうだし。
「今日さ、俺ん家来ねぇ?」
「え、‥‥なんで」
「今日親いなくてさー、夕飯自分で作れって言われたんだけど一人じゃつまんねーし」
「えぇ‥‥‥」
「? 用事あった?」
「無いけど‥‥」
えぇ‥‥‥。
「よし、じゃあ行こうぜー」
「え、あ、」
‥‥えぇ‥‥‥。
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そうして来てしまった原家。
確かに、親御さんはいないようだ。
「なに作る予定だったの?」
「んー、適当に」
「適当‥‥」
適当すぎる。料理を適当にこしらえようなんて無謀だ。
昔、手順を間違って危うく火事になりかけた私が言おう。
無謀な料理は、ただの事故になる。
「じゃあ、肉じゃがとか‥‥?」
「お、いいじゃん。作れんの?」
「ある程度は」
「じゃあ、それな」
お母さんのエプロンを渡され、渋々着ける。
なんだろう、何かが徐々に消えていっているような‥‥‥(警戒心)
ともかく、承諾したからには、本気で作る。それが私のポリシーだ。
と思い原を見ると、早速携帯を弄り始めていた。
‥‥こいつ‥‥私に押し付けたかっただけか。
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冷蔵庫にほとんど材料はあったため、急いで下ごしらえに取りかかる。
もう既にソファに座った原のことは忘れることにした。
「えっと‥‥醤油‥‥。 ‥‥どこだ?」
訊こうと思って原を見たが、うたた寝を始めていた。
もう本気で忘れることにした。
「あとは‥‥煮込むだけ‥‥か?」
一段落した‥‥と思った瞬間、ピロロピロロと響き渡った。
え、なに‥‥‥って、炊飯器ね‥‥。
「‥‥ん、あ?」
その音に目覚めた男、原一哉。
眠気眼‥‥目が分かんないけど、眠そうな気配を漂わせてキッチンに向かってきた。
「炊飯器か‥‥」
「あ、止める?」
「あーいいよ。やる‥‥」
「────!!!?」
────う、ぅえぇぇえ────!?