第7章 人は見た目で決まらない【原 一哉】
私には、彼氏がいる。
「維ちゃーん、帰ろ~」
「うん」
いつものようにお茶らけながら現れたこいつ──原一哉。
こいつの目がどうなっているのか、は、私もよく知らない。
前髪が重いせいなのか、風に吹かれても強風じゃない限りビクともしない。
そんな謎過ぎるこいつと付き合うなんて、入学当初の私は思ってもいなかった。
「今日の帰り、アイス食ってかね? 暑すぎだし」
「いいよ」
私の理想とは大分かけ離れていた為か、私はあまりこいつを信用してはいない。
いつか必ず、「飽きたから別れよ」と言われたっておかしくないからだ。
そういう男だって、常々聞かされてきた。
「俺ミントチョコにするから、お前好きなの選んでて」
「わかった」
こいつはよく話しかけてくるけど、私から話しかけることはほとんど無い。
変に情はかけたくないからだ。
結局、アイスを選ぶこともなく、原を待っていた。
そのうち、片手にアイスのカップを手にしながら原が歩いてきた。
「あれ、選んでねぇの?」
「うん。夕飯もうすぐだし」
「ふーん」
いただきますをしてアイスを食べ始めた原を、無意識に観察していた。
こいつ‥‥何者なんだ。
「? 食べてーの?」
「‥‥違う違う」
「? そー」
不思議そうにアイスをパクパク食べていく原。
目‥‥目どうなってるの。
こんなに表情を読み取るのが難しい人物は初めてだった。
「はーっ、うまかったー」
「よかったね」
もうすぐ日暮れだ。早く帰りたい。
そんなことを思いながらぺらぺら話すそいつの横を歩く。
ていうか‥‥こんなに興味なさそうにしてんのによく話せるな。ぺらぺらと。
って言っても、話すことは大体くだらないことばっかり。
ドラマの話も、私はあんまり見ないから乗れないし、ゲームの話も機械音痴の私からしたらさっぱりだ。
こいつの趣味と私の趣味は合わない。
ただそれだけ。
「あ、じゃあ、ここで」
「おう。またー」
「うん」
そのうち、いつもの別れ道で、私たちは別れた。
「また」って言ってたけど、その「また」はあと何回続くんだろう。
原は、どんなこと考えて私と一緒にいるんだろう。
別に、好きでもないくせに。