第6章 意気地無しのくせに。【森山由孝】
全身が揺れるほど心臓が脈打つ。
どうしてここまで心臓の脈が速まるのか、未だに誰も分からない。
シーツ1枚越しの体温は、儚くてすぐに消えそうだった。
「・・・維」
『な、なに』
また声が裏返る。いい加減にしてほしい。
『・・・森やm───────っ!?』
顔を上げようとした瞬間、世界が反転した。
・・・何・・・?
「・・・敵わないな」
窓の外の薄明るい街灯で逆光して見えない森山の表情。
すぐそこまで迫る顔と、漂う香り。
もう何度目かも分からないキスで、脳の思考回路は溶けきっていた。
『っ・・・んむ』
何かを言おうと口を開いても、ただ、深く深く繋がるだけ。
拒否権なんてない。
そう言われているみたいだった。
・・・怖い。
怖いはずなのに、何故か逃げられない。逃げたくない。
このまま、この時間が続けばいいのに。
「・・・俺、もうダメかもしれない」
『え、どっか調子悪い?』
「・・・・・・そういうことじゃない」
『え』
目を丸くした途端、重なってくる森山。
頭の後ろと首の後ろをホールドされ、身動きができないほど抱き締められた。
『ちょ、苦・・・しい・・・』
「嫌だ。絶対離さない」
『!?』
「嫌だ」!? 森山が!? 駄々こねた!?
色んな意味で心臓がバクバク鳴る。
「・・・一生このままでいいのに」
『いや無理だかr───っ!』
首筋がピリッとした。
紅く咲いた花弁のような・・・っていったらロマンチックだけど・・・つまりキスマークをつけられた。
・・・初めて、かもしれない。
『なっ・・・え・・・なぁ・・・!?』
「あぁもう、本当、どうすればいい」
『!?』
「・・・運命とかどうのこうの飛ばして、本当に維が好きだ」
『!!?』
「・・・はぁぁぁぁぁあ。どうすればいい」
『!?』
「・・・2ラウンド目、いこう」
『!!!!!?』