第6章 意気地無しのくせに。【森山由孝】
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温もりが辺りを包む。
生まれたままの姿で寝転ぶ私たちには、その温もりが何処よりも、誰よりも強く伝わっていた。
不意に頭を撫でられる。
「・・・・・・ごめんな」
『なっ、なんでよ』
・・・突拍子も無かった言葉に声が裏返った。
謝るのは、こっちの方だよ。
ごめん、って言えたらいいのに。
無力な私は、口を結ぶことしか出来ない。
「・・・俺、焦ってたのかもしれない。
維が・・・遠くなる気がした。
いつの間にか嫌われてたのかと思ってた。
・・・自分勝手で、維を怖がらせた」
『・・・』
まぁ、怖かったけど。
でも、そんなの、どうってことない。
いつまでも、今までも、私にとっては森山がいちばんで、大きな存在だった。
『私だって、焦ってたよ・・・。
森山がいつも私の思ってること全部見透かしてる気がして』
でも、なんだか違かったみたい。
私、だけじゃなかった。
森山も、みんな、どこかで焦ってた。
・・・それが知れただけでも、私は嬉しい。
『・・・それでも、森山でよかった。
森山が、運命、の人、みたいなのでほんとに良かったよ』
神様サンキュー、はじめまして青春。
これからだから。わたしたち。
自分達のペースでゆっくりやってこう。
髪を手櫛する動きが急に止まった。
そしてグッと引き寄せられる。
おでこと鎖骨がコツンとぶつかった。
森山の溜め息が頭上から降ってきた。
「・・・何てこと言うんだ」
『・・・えっ』
「・・・はぁぁぁぁぁあ。」
『え』
驚きと不安で顔を上げそうになると、グッと押さえつける力が強まった。
『も、森山・・・!?』
「・・・手、回してくれないか」
『? こ、こう?』
「ああ。・・・はぁ」
『え、なんか地雷踏んだ?』
「・・・ある意味地雷」
『えっ』
火照っている体が密着して、熱がこもる。
不安だけで埋め尽くされた脳内が、森山の手櫛が再開したことで大きくなっていく。