第6章 意気地無しのくせに。【森山由孝】
今度こそ、しゃくり上げてしまった。
両目からボロボロと無様に流れる雫が馬鹿らしい。
こんなところで泣いたって何もならない。
でも、そんなもの全部突き抜けて、今はただただ森山の傍に居たいと思った。
『・・・っ、ごめん・・・』
「・・・ああ」
肩に置かれた手のひらが熱い。
その手のひらが腰を抱く。
視覚も、聴覚も、感覚も、全部が森山で埋まる。
今だけは、
今だけは誰にも邪魔されたくない。
窓の外に広がる街並みが、部屋の中を薄明るく照らしていた。
衣擦れの音しか聞こえない。
初めて誰かに触れたときのような、初めてキスをしたときのような、初めて結ばれたときのような浮遊感が脳を温めていく。
ふやけそうなほど曖昧な視界で、雫が頬を滑った。
『・・・もりや・・・』
「何でもない。すまん」
────初めて見る、涙。
いつ何時だって涙を見せなかった。
それに、いつの間にか甘えてた。
頭を引き寄せる。
首元に埋まる髪の毛がチクチクした。
肌が涙で濡れていくような感覚なんて放っておいて、今は森山の全部を知りたい。
『・・・んっ』
首筋を辿って熱が伝わった。
もう、今だけは、私たちを止めるものなんかない。