第6章 意気地無しのくせに。【森山由孝】
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階段を下りる足。
鞄をかける肩。
ポケットに突っ込んだ掌。
・・・悔しいけど、全部が全部、様になってる。
そうだよ・・・黙ってればイケメンとかいう【残念イケメン】らしいけど、私からしたら普段の森山だって男前だ。
どこが好きなの? って訊かれても、よく・・・分からないけど・・・。
遠くで聞こえる掛け声も聞こえなくなって、夕日は沈んだ。
月が顔を出して、辺りは真っ暗だ。
それでも数歩先を歩く森山は、私の方を振り向こうとしない。
やっぱり・・・怒ってるのかな・・・。
少し気恥ずかしかったが、森山の気を引く作戦に取りかかった。
『も、森山~? わ、私怖いな~・・・真っ暗だね~!』
「・・・そうだな」
っっっ!!!!!?
っっっっ恥っずッ!!!!!!
え、何その塩対応!
めっちゃ恥ずかしいんだけど!?
こっち見ないで答えたしね!?
『・・・はぁ』
「維」
『はい!!!!?』
溜め息の瞬間に、名前を呼ばれた。
心臓が跳ね上がる。
「・・・なんで今日、あんなに逃げたんだ?」
───心臓が、跳ね上がった。
・・・え?
『逃げた、って・・・』
いつのまにか足を止めていた。
背後には我が家があって、やっぱり明かりは点いていない。
『逃げたんじゃ、』
───いや。違うでしょ。
私、逃げてたじゃん。
どうして、あんなに、必死だったのか。
どうして、森山の腕の中を危険だと思ってしまったのか。
───私、自分を守ってただけだった。
鍵を取り出して、開け放つ。
森山の腕を引いて、部屋へと入れて。
あそこで言ってしまっていたら、泣きそうだったから・・・
「・・・維?『いっつも・・・』・・・?」
・・・ここなら。
もう、抑えなくていいんだ。
『いっつも、森山ばっかり・・・っ、
余裕でいて、かっこよくて・・・。
私なんか、いつも焦ってどうしようもなくなって、一人になったときに後悔ばっかりして・・・っ!』
『なんで森山はそんなに余裕なの!?
なんで・・・なんで森山ばっか────』