第6章 意気地無しのくせに。【森山由孝】
教室まで荷物を取りに行く。
夕焼けが滲む窓から、
今日も一日が終わるのだと思い更けた。
『・・・。
・・・・・・なんで、ついてくんのよ・・・』
思い、更けていた、のに。
後ろから当たり前のようについてくるそいつが気掛かりだ。
なんだか、いつもの森山と違う。
何かあったのかな。
『・・・何か、あったの?』
「・・・いや、そんなわけないだろう」
『ふ・・・、ふーん』
じゃあ、なんだよ。
意味もなく何かをするようなタイプでもないから、やっぱ変だな。
『───はぁぁぁ───・・・』
「お疲れ」
『んー』
教室はまさしく夕焼けこやけ。
グラウンドからの大声や、
音楽室からのピアノの音。
もう下校時刻なのに、足りないようだ。
『・・・私たちも、まだまだやってた筈なんだけどなぁ・・・』
そこまで言って、口を押さえる。
禁句だった。
悔しいのは選手である森山たちなんだから、私が言うべき言葉じゃない。
やっちまった。
「・・・維」
怒られる、か・・・
────・・・、
・・・・・・え?
ふわり、と重なったのは、大きな背中。
コートの中で存在感を放っていたあの大きな背中が、腕が、私を包み込む。
『・・・もり、やま・・・?』
名前なんて、届かないように思えた。
それくらい、今日の森山はやっぱりおかしい。
こんな場所で、人に見られるような場所で。
いつもはこんなこと、しないのに。