第6章 意気地無しのくせに。【森山由孝】
───・・・やっぱり・・・呆れた、のかな。
「・・・そういうことは、早く言ってくれ」
『・・・・・・っえ、』
掠めた頬が熱くなってる。
髪の毛越しなのに、体温が熱いのが分かる。
森山も、緊張してるの?
「・・・参ったな」
『ご、ごめん、本当に・・・』
「謝るな。謝ることじゃないだろう」
ポスポスと頭を撫でられる。
たったそれだけのことなのに、足の先から【安心感】が漂ってきた。
『・・・ありがとう』
言葉に表せないほどの感謝を、腕に力を込めて伝える。
伝わったかどうかは、分からないけど。
『・・・!』
そして。
仄かな期待が胸を膨らませる。
森山の指先が顎を掬って、髪がさらさらと流れていった。
この、言い表せない緊張が好き。
そう思えるのは・・・やっぱり、森山だからだよ。
『・・・っん』
柔らかい感触が熱さを伝線させる。
髪が流れた部分に風が当たって、ふわりと涼しさが漂った。
「・・・っ、維」
『───!』
・・・ずるい。
どうして、森山だけそんなに余裕そうなの。
いつも、いつもいつも、私だけ───
「───っむ、」
『っ──』
森山のジャージの袖を引き寄せる。
仄かに伝わる熱に、どうしても鼓動が跳ねてしまった。
ぐいっと。
森山の袖を離さないで。
ただただ熱を貪っていた。
熱に息が上がってきた頃。
森山の腕が腰を支えた。
それにも脈が跳ね上がって、背筋がピンと伸びきる。
足さえも力が抜けてきて、正直怖い。
なのに・・・抵抗は出来ないんだ。
「・・・いいか?」
『え?』
「・・・部屋、行っても」
『───!!!!』
そそそそれは。つまり。
そりゃあ思春期だから意味も分かる。
森山が嫌な訳じゃない。決して。
だから、────((ブォォォン───
・・・・・・・・・・あ。
「維?」
ばっと窓の外を見やる。
・・・やっぱり。
『ご、ごめん森山』
「え?」
『・・・お母さん、帰ってきた』
───タイミング最悪。