Ég mun fela þig(進撃の巨人・ライナー夢)
第10章 天と地の時間
数多の巨人が入り乱れ、戦況は混迷を極めていた。ベルトルトの超大型巨人がその圧倒的リーチで薙ぎ払い、マルセル・ユミル・ポルコの顎の巨人達が次々と他の巨人達の項を噛みちぎる。
その中には、ヒルドルの同期に当たる者達もいた。彼らは残念ながら、ジークやあの金髪の少年の呼びかけに答えられなかったのだろう。ヒルドルは一度、祈るように目を閉じてから車力の巨人の項を叩き潰した。それはあの時、少年だったライナーが懸命に運んだ砲弾をのせていた彼だった。
ヒルドルは咆哮し、周囲の巨人たちを蹴り飛ばし、放り投げ、島のエルディア人たちの活路を切り開く。
そして、その中のだれか一人が、ついに起爆装置を押したらしい。巨大な爆発が見えたかと思えば先端の頭が落ちていった。ほぼ同時にジークの討伐も終わったようで、地ならしを起こしていた超大型巨人たちは次々と動きを止めて崩れ落ちていく。
終尾の巨人の首から、巨大な寄生虫が蠢く。
(アイツが、エレンの首を……!)
ライナーが動くよりも早く、ヒルドルが前に出た。
「支えます!」
両者は寄生虫に飛びかかり、押さえつける。
寄生虫が暴れ、二体の鎧の巨人の装甲が次々と砕けていく。
だが、それでも手は離さない。
「やれ、アルミン!!!」
ライナーが叫ぶ。
次の瞬間、アルミンが 超大型巨人に変身した。
閃光が走る。
そして、すべてが爆風に飲み込まれた——。