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Ég mun fela þig(進撃の巨人・ライナー夢)

第1章 彼の世界


『クリスタちゃんのこと、残念だったね。連れていきたそうだったし』
「それは兵士の俺の話だろ」
『でも、兵士としての貴方も貴方なんでしょう』


違うの?と彼女は問うてくる。
そんなのこっちが聞きたい。
彼女と同じように、兵士の自分はいつの間にか生まれて、いつの間にか自分の中での主導権を得るほどに大きくなっていた。
兵士として溶け込むための仮面のはずだったのに。壁の中の悪魔達に怪しまれないための演技だったのに。


「なあ」
『同じだったと思うよ、私も。貴方の立場だったなら』


問う前に先を越されたが、それだって今に始まったことじゃない。
心の片隅に住まう彼女がこちらの思考を読んで答えを先回りさせるのは毎度のことだから。
彼女ははっきりと答えた。
私がライナーとして生きていたとしても同じ苦しみに心を揺らしただろう、と。


『私も同じだよ、貴方の目を通して彼らを見た。でも……ごめんね、だからこそ貴方には自分の使命を忘れないで欲しい。他でもない、貴方のために』

「お前に言われるまでもねぇ……失せろ、化け物」

『ふふ、わかった……さよなら、ライナー。今日は戦士のあなたが強いのね、ちょ
っと安心した』


こちらのかなり強い語気にも彼女は意に介した様子なく柔らかく微笑むだけだった。
それだって今に始まったことじゃないと言いたいのだろう、事実ライナーは戦士と兵士の間で彼女に対しての態度に相当の差があった。本人に自覚がなかったとしても、彼女に対する扱いの差は壁内の人間に対する態度の差と似たようなものだ。
目の前でほほ笑む彼女の姿が朧気に歪んでいくのがわかる。自分の世界、夢の中に落ちていく感覚がする。
そうしてライナーは意識を手放した。
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