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Ég mun fela þig(進撃の巨人・ライナー夢)

第1章 彼の世界


『貴方だと知ってたら、僕は……!!』
『ライナー・ブラウン候補生。続けなさい』
『嫌だ!絶対に嫌だ、僕は!』
『どちらにせよもう予定は変えられん』
『ジーク。刺せ』
『了解しました』
『待って、待ってよ、嫌だっ、嫌だ!!』


「待っ……」
「おいベルトルさん、お前が寝相が芸術的なのは聞いていたがこっちは寝言が芸術的なのかよ」


誰かを引き留めようと飛び起きた瞬間、ユミルの呆れたような声が耳朶を打った。
寝惚け眼で辺りを見回すと、そこがシガンシナ区外壁であることに気づく。
度重なる巨人化で疲弊した体を休めようとしていたことを思い出した。それとは反比例に今しがた見た夢を忘れていく。


「何か、変な夢でも見たの」


ベルトルトが沈んだ声音で問うてくる。彼は今まで見張りを担当してくれていたらしい、声に疲労が表れているがまたこれから日が落ちれば向こうに行かねばならない。


「いや……何か、思い出しそうだったんだが」
「あー、そういうのは思い出せねぇよ」


割り込んできたユミルの声に重そうにそちらを向く。
彼女は片膝を立てもう片足を伸ばして座っていたのを首だけこちらに向けていた。


「思い出そうとするほどに忘れるんだ。不便だよな、人間って」
「随分知ったような口だな」
「こう見えても長生きなんでね」


これから死にに行くというのにいつもと調子が変わらないのは彼女なりの虚勢なのだろうとなんとなく思った。
事実自分が眠りに落ちる前は、彼女は涙しながら自分の女神としての決意を固めていたのだから。


「ライナー、もう少し休んでくれ。また巨人化してもらわなきゃならない」
「ああ……わかってる」


ベルトルトの言葉に再び横になり直すと二人の存在は意識から遠ざかる。
夢も見ないほどの眠りはすぐそこにいるのに、ライナーはこの感覚を知っていた。

『彼女』に呼ばれる時の感覚だ。


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