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Ég mun fela þig(進撃の巨人・ライナー夢)

第4章 彼女の世界2


『彼はこうも名乗った』
『自分はマーレの最高戦力、そしてエルディアの希望である鎧の継承者だと』
『その鎧を用い、エルディアの復権の為に戦士として戦っていると』
『私は彼を知っているが、彼が私を知っているはずはないのに』
『私は、彼との意思の疎通を試みる』
『最初は幼い姿だった彼は、年月と共に大人びていく。それはまるで、顕現する神を目の当たりにした巫女のような思いだった』
『はるか昔、ユミルの民でも特に血の濃い者は同志で心を共有し意識を繋げていたと聞いたことがある』
『もしかしたら私は、古のその力を現代に蘇らせたのではないだろうか?』
『私は夢を通して彼を観察、ないし監視することを決める』
『私は彼を、審判せねばならない。それが私の、最後の仕事だ。下された命令だ。私はこのために生まれてきたのだ』


なにかに陶酔したような、気持ちの悪い文体。
その筆跡に目を通す度に、酷く恥ずかしい思いやこの手帳を衝動のままに破棄してしまいたいという思いに捕らわれるが、ヒルドルはそれでもこの手帳を手放したりはしなかった。
知っていたからだ。この文体は薄れ行く夢のことを書き留めるためになりふり構わなかった故のものであるのだと。
夢の続きを書き綴るためにゆっくりと筆を執る。


『彼は私の存在を疑問に思い始めたようだった。そして同時に、自分の心の中に別の人間がいることに違和感を覚え始めている』
『当然だ。自分の心を頻繁にそれなりの時間を覗かれるのは気持ちのいいことではないだろう』
『彼は私に「失せろ、化け物」と言った』
『彼の中で、得体の知れぬ私は化物なのだろう』
『否定はしない』
『もう私は彼の心を覗くことはしない』
『私の使命は、これで終わったのだから』


……本当に?

頭の中で響く言葉にヒルドルははたりと筆を止めてしまう。
終わったという根拠、終わっていないという根拠。
どちらも彼女の中にあったからだ。
処遇を決めるだけで私の使命は終わりなのか?
他にもやるべき事は残っているのではないか?

この事ばかりは、『わからない』で済ませてはいけない気がした。
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