第1章 幼馴染のアイツ
すると顔をズイッと近付けて私に言った。
美勇人:「...もしかして何か困ったことでもあった...?」
凛花:「えっ...。」
美勇人:「何か少し眉間にシワが寄りそうになってる。」
凛花:「何その表現。」
私はクスクスと笑いながら言うと 美勇人もつられて一緒に笑った。
でも美勇人はもう一度私の目を真っ直ぐ見つめると 真剣な顔をして言った。
美勇人:「で。何か困ったこと あるんじゃないの?」
凛花:「...。」
美勇人:「...。」
凛花:「...顕嵐には絶対言わない?」
美勇人:「もちろん。」
美勇人は優しく笑うと「言ってみ。」と私に催促した。
そこで私は今日の昼休みにあったことを美勇人に話した。
美勇人:「...。」
凛花:「私はそれで好意があるとは思わないんだけど 男の人から見てこれって好意があるからすることなの?」
美勇人:「んー...。分からないけど俺だったらー...。」
そう言って何か答えようとした時 私の耳を誰かがそっと塞いだ。
この香り。
それにあったかい体温。
私の耳を塞いだ人なんてすぐに分かった。
振り返ると今 丁度私と美勇人で話題に上がっていた顕嵐がいた。
凛花:「顕嵐!」
美勇人:「!」
顕嵐:「人がいない所で何恋バナしてんの。」
顕嵐は腰を折ると私の耳元に顔を近付けながら言った。
そしてなぜか少し不機嫌そうな声だ。
凛花:「えーっと...。」
美勇人:「それはですね...。」
顕嵐:「凛花。」
凛花:「?」
顕嵐:「...今日は帰るよ。話したいことがある。」
凛花:「えっ...。」
そう呟くと私の広げてた荷物をすぐに片付けて 自分のバックの上から私のバックを肩にかけた。
そして私の手をなぜか握ると図書館の出口の方へと向かった。
凛花:「美勇人。まっ...またね。」
美勇人:「んー。」
そう言うと美勇人は優しく笑いながら私に手を振ってくれた。
美勇人:「お幸せにー...。」
そう言う美勇人の顔は前髪隠れて見えないが 口角は下がり声は掠れていた。
図書館から出た私達はそれから黙ったまま昇降口に行って靴を履き替えるといつもの道を黙って足早に歩いて行った。
何度も顕嵐って呼んだけど 聞こえてないのか無視された。
そんなに怒るようなこと したかな...。