第3章 優しいアイツ
怜央:「凛花?」
凛花:「...。」
まだ完全には私だって気付いてないから 今のうちに逃げよう。
怜央の姿は見たいけど 一緒にいたくないのは事実だから。
そう思った私は怜央がこっちに来る前にドアから離れて 出来るだけ電気がついてない道を選んで下足室に向かった。
電気がついてない道は体育館から下足室に向かうには少し遠回りだ。
だけど怜央に会わなくて済むならいいや。
それに今から部室に戻って服着替えたりするからもっと時間もかかるはず。
そう思った私は足音を立てないように歩いた。
地下にある下足室に到着すると 自分の靴が置いてある場所に向かった。
1人で帰るなんて 怜央と付き合い始めてから1度も無かったから何だか寂しく感じてしまう。
それに何も言わずに勝手に帰るのも何となくだけど罪悪感を感じてしまう。
...私...本当に怜央のことが好きなんだな...。
そんなことを思いながら歩いていると 前方から聞こえるはずのない声が聞こえた。
怜央:「りーんか!」
凛花:「...⁉︎」
俯いて歩いていた私はゆっくりと顔を上げると そこに制服に着替えた怜央がいつものようにニッコリ笑って私の名前を呼んだ。
だってさっきまで体育館にいたんじゃ...。
いくら部室が体育館に近いからってあんなに疲れてる様子なのにたった5分で着替えられるわけないない。
どうして怜央がココにいるの?
そう思って固まっていると 怜央はクスッと笑いながら私の方に歩み寄ってきて抱きしめた。
怜央:「凛花。」
いつものように肩に顎を乗せて耳元に唇を寄せると囁くようにして言った。
凛花:「!」
怜央:「ねぇ。...何で俺のこと 置いて帰ろうとしたの?」
凛花:「...別に置いて帰ろうなんて...。」
すると怜央は私の唇に人差し指をそっと立てた。
怜央:「嘘。だって体育館に来たのに俺に何も言わずにココにいるのはそういうことでしょ。」
凛花:「...何でいたって分かったの?」
怜央:「さぁ?何ででしょう。」
怜央はクスッと笑いながらそう言った。
怜央:「で。どうして?もしかして何かあった?」
怜央は私の顔を至近距離で見つめながら尋ねた。