第3章 優しいアイツ
昼ご飯を食べた後 私は怜央に抱きしめられて過ごしていた。
何か少女漫画みたいだな。
モブからかなり昇格したな 私。
そんなことを思いながら私は怜央の香りに包まれた幸せな時間を過ごした。
そして昼休みが終わる15分前になると 離れるのは寂しかったが練習に遅れるわけにはいかないので私と怜央は荷物をまとめて屋上から出た。
手を繋いで校内を歩いていると怜央が突然はっとした顔をして言った。
怜央:「あ!凛花!」
凛花:「ん?」
怜央:「屋上にスマホ忘れたみたいだから 先に体育館に戻っててくれる?」
凛花:「分かった。遅れないようにね。」
怜央:「もちろん!」
そう言うと怜央は私を名残惜しそうに見つめながら手を離すと来た道を戻って行った。
体育館に戻った私は萌と午後の練習の準備をしていた。
しかし怜央は午後の練習開始5分前になっても戻ってこない。
屋上にスマホを取りに戻ったわりには遅くないかな。
てか何かあったのかな。大丈夫かな。
そんなことを思っていると萌も同じように思っていたみたいで私に言った。
萌:「てか長妻君 帰ってくるの少し遅くない?」
凛花:「うん。」
萌:「何してんだか。」
凛花:「屋上にスマホ忘れたから取りに行ってくるって言ってたけど...。」
そんなことを話していると 午後の練習開始2分前になって怜央が肩で息をしながら戻ってきた。
怜央:「ギリギリセーフ?」
「遅ーよ!長妻!」
怜央は時計を見ながらそう言って入って来た。
凛花:「...っ...。」
怜央の手にはスマホが握られていた。
一見 本当にスマホを取りに戻るのに時間がかかったようにしか見えない。
でも私はたまたま見えてしまった。
怜央のジャージのポケットに 昼休みに怜央に差し入れをしようと探していた女の子が持っていた水色の紙袋が入ってるのが見えた。
怜央は私の方にやって来ると申し訳なさそうに言った。
もしかしてその差し入れを貰わざるをえない状況になったことを教えてくれるのかな。
そんなことを思いながら怜央を見上げた。