第3章 優しいアイツ
「じゃあ今から1時間昼休憩だから ゆっくり休息を取るように。」
コーチはそう言うと1度解散となり 私は萌とデータを記入した用紙をファイルに綴じていた。
するとタオルを手に持った怜央が私の元に駆け寄って来た。
怜央:「凛花ー!」
凛花:「痛い...。」
怜央は駆け寄って来ると 私に抱きついて来た。
そして私の肩に顎を乗せて 横から覗き込むように私に言った。
怜央:「お昼 食べよ!」
凛花:「...ん。」
私は萌と用紙をファイル綴じ終えると マネージャー用の部室の棚に戻して 怜央とお昼を食べようと 校舎の屋上に向かった。
もちろん手を繋がれて。
怜央:「あー...。練習 今日は超ハードだよね。」
凛花:「そう?」
屋上に着くと 鍵を閉めて塗装が剥がれかけてるベンチに座った。
風が冷たくて持って来たマフラーを首に巻いた。
怜央:「そうだよ!いくら大会前だからって増やしすぎだよー。」
そんなことを言いながら怜央はコンビニで買ったパンの封を開けた。
凛花:「それだけコーチが皆に期待してるってことじゃないの?」
怜央:「そうだといいんだけどね。」
怜央はクスクスと笑いながら言った。
すると休日の校舎は静かなせいか 1階にいる怜央のファン達の声が聞こえて来た。
「ねぇ。怜央君って見た?」
「んーん。」
「どこ行ったんだろ?これ差し入れしたいのにー。」
そう言う女の子は水色の包装紙に包まれた小さな物を両手に持っていた。
「あ そっか。午後からはギャラリー閉められるから見れないんだもんね。」
「そ!だから渡したいんだけどいないし。」
この会話を屋上の柵から見ていた。
すると怜央はクスクスと笑いながら私の顔を見つめながら言った。
怜央:「俺はここだけどね?」
凛花:「そうだね。」
怜央:「てか 差し入れはやめてって言ってるのに。」
凛花:「何で?すぐお腹空くからあったほうがいいんじゃないの?」
首を傾げながらそう言うと 怜央はニコニコと笑いながら至近距離まで顔を近づけて言った。
怜央:「凛花以外の人からはどんな物でも貰いたくないの。」
凛花:「!」
怜央:「やっぱり好きな人から貰う物よりも嬉しいものはないでしょ?」
「そう思わない?」と言われ 私は赤くなる頬を隠すために俯いて黙って頷いた。