第8章 真実
翔さんに別れを告げられ、初めて翔さんと会う仕事。
きっと翔さんは気にしてるんだろうな…
最後まで笑顔で終わらそうと一生一代の芝居をするつもりでいたのに
最後の最後…翔さんに抱きしめられた時、涙が溢れてしまった。
翔さんの想いが詰まった抱擁…
翔さんの気持ちはちゃんと伝わったよ。
俺の方こそありがとう…
俺が真実を伝えなかった事を、貴方はこれっぽっちも責めなかった。
俺の愛は貴方にちゃんと伝わっていたんだね…
ただ、貴方のあの人への想いが勝ってただけ…
記憶をなくしても、やっぱり貴方はあの人を好きになったんだ。
今度こそ幸せになってよ。
大野さんも貴方のことが大切な存在だと気がついたんだから、幸せになれるでしょ?
近くでその姿を見るのは少し胸が痛むかもしれないけど、応援してるから…
俺は最初から翔さんの幸せだけを祈ってたんだから。
楽屋の前で静かに深呼吸をして、ドアノブに手を掛けドアを開いた。
「おはようございます」
出来るだけ明るい声で挨拶をすると
新聞を読んでいた翔さんが新聞を下ろし、少し緊張した笑顔で挨拶を返してくれた。
「おはよ、ニノ」
「まだ、翔さんだけ?」
「うん、まだ皆来てないよ」
「そっか」
鞄をテーブルに置き、椅子に座るとスマホを取り出しゲームを始めた。
ここ数ヵ月は定位置となってた翔さんの横ではなく、
以前の定位置に戻る。
ゲームから目を離し顔をあげると、翔さんが悲しそうな目で俺を見てた。
やっぱり気にしてるか…
「翔さん?どうしたの?」
「あ、ううん、なんでもない…」
慌てて視線を逸らす翔さん。
「翔さん、今まで通りにして?
フラれたくらいで仕事に影響出したくないし、それに翔さんにフラれたなんて、他のメンバーに知られたくないから…
特に相葉さんにバレたらさ、あの人落ち込むでしょ?同情体質だから…
俺は全然大丈夫なのにさ、周りに気使われたらその方がしんどいよ」
笑顔でそう伝えた。
「うん、わかったよ…ごめんね」
「翔さん、もうごめんねも無しね?」
「うん、ありがと、ニノ」
翔さんが微笑んでくれたから微笑み返した。
もう大丈夫そうだね…