第5章 認識
智くんの為に俺は過去を忘れたままにする事にした。
何かの拍子に思い出してしまうかもしれない…
でも、自分から過去を探すのは止めることにした。
だって、思い出しても智くんを苦しめるだけだから…
だからね、智くんも忘れて?俺が貴方に迷惑を掛けた全ての事を。
ただの仕事仲間として、同じグループのメンバーという立場に戻るから…
相葉くんや松潤と同じように、大切な仲間として貴方を見ていくから。
そう思って智くんにお願いをした。
「俺の事、忘れてくれる?」
一瞬、胸が痛んだ。
なんで胸が痛んだのかは分からないけど…
とても哀しい言葉に聞こえた。
でも、今はそんなことを気にしてる場合じゃない…智くんに思いを届けなくちゃ。
返事を躊躇する智くんに、きちんと説明しなくちゃ。
少し考えて智くんが了承してくれた…
これで貴方を俺から解放してあげられる。
ごめんね、今まで迷惑かけて…
「これからはさ、仕事仲間としてだけよろしくね」
そう言って手を差し出すと智くんがその手を握り返し微笑んでくれた。
「うん、また翔くんに頼っちゃうかもしれないけど、よろしく」
「それでいいよ…智くんは智くんの思うようにして?
他のメンバーが、前のふたりに戻ったって言ってくれるようにさ」
「ありがと、お言葉に甘えて遠慮なく頼らせて貰うから、その代わり後悔しないでよ?
余計な事言っちゃったなぁってさ」
智くんが笑って冗談を言うから俺も笑って返した。
「え~、やっぱり止めようかなぁ…俺の仕事増えそう~」
「ふふっ、もう後悔してんだ?」
「うん、思いっきりしてる」
真剣な顔をしてそう答えた後、ふたりで顔を見合わせて笑った。
智くん…貴方への想いは誰にも知られないように心の奥底に沈めるから。
だから、哀しい顔はもうしないで…
笑顔だけを見せて…
それが今の俺の一番の願い。