第4章 再開
翔くんは記憶をなくしてもやっぱり翔くんだった。
俺の事が記憶がないなんて、周りの人たちに気づかれるような事はなく
他のメンバーの助けもあって、今まで通り仕事をこなしていく。
ただ、暫くは俺とふたりだけの仕事はなくす方向で進んだ。
じゃないと、いざというとき誰もフォロー出来ない。
俺一人じゃ到底無理だろうからって、メンバーと話し合ってスケジュールを組み直した。
だから、翔くんとふたりきりで話すことはほとんどなく、楽屋でもメンバーみんなで昔話をすることが増えた。
少しでも翔くんに情報を与える為に。
俺以外の記憶はあるわけだから、そんな事しなくてもいいと思うんだけど
『あの時の大ちゃんてばさぁ』とか『あんときのリーダー超ウケた』とか俺の事を絡めて話していく。
相葉ちゃんと松潤にしてみれば、俺の記憶がない翔くんを見ているのが心苦しいのかもしれない。
なんで一人だけ?って思ってくれてるんだろうな…
しかも表向きは、いざこざがあった訳じゃない。
でも、俺も、そしてニノもきっとこのままでいいと思ってる。
翔くんにとってはその方が幸せだから。
ニノと一緒にいる翔くんはいつも笑顔だ。
俺は翔くんにあんな顔をさせてあげることが出来てなかったと思う…
俺の側にいた翔くんはどんな顔をしていたんだろう…
俺はそれすら知らないんだ。
なんで俺はこんなにも翔くんの事をちゃんと見ていなかったのかと不思議に思うくらいだ。
気がつくと、いつも隣にひっそりと控え、俺を支えてくれていた…
あぁ、そっか…隣にいたからだ…
隣にいたから、翔くんの表情を見る事が少なかったんだ。
隣にいて当たり前の存在…
そりゃ、いなくなったら寂しいに決まってるじゃん…
俺ってほんと大馬鹿だな…