第17章 リアル非充実 (5)
たしかに俺は寝た。といってもほんの数十分だったと思う。は幼いが子どもではないのだ。勝手に自分で部屋に戻るだろう。
瞼を開けて首を捻じれば俺の心臓が跳ねた。の肩を揺する。を拾った日と被さる。あのときは瞬時に飛び退いたが今日は違う。酒のボトルを大事そうに抱きしめ、眠たそうに目をこすりながらか細い声でむにゃむにゃ言っている。どこの酔っぱらいだ。空は白みはじめている。
「あんだけ男嫌いのくせに甲板で寝ちまうなんて、おまえさんもうすこし危機感もてよい」
「……はい。でも、マルコ、さん、いればだいじょうぶ、と思って……」
俺の呼吸は一瞬止まる。の腕をとって立たせ、どつきながら部屋に送り込んだ。
「で、マルコ。オヤジのとこにはいつ土下座しに行くんだ?」
甲板で久しぶりに煙草をふかしていると、サッチが足取り軽くやってきた。にやけ具合がいつもの三割増になっている。
「なんの話だよい?」
「しらばっくれても無駄だぜ。ちゃあんと目撃者がいるんだ。ちゃんと朝帰りしただろ? え? やっぱおめえを『妹見守り隊』通称『いも隊』におくわけにはいかないな」
めんどくせ。ってか『いも隊』って……。
「ドーツに訊いてみろよい。俺は子守り役だ」
こういうことははぐらかすほうがこじらせるので、暇潰しも兼ねて説明した。
「信じらんね! それって、マルコのほうが先に寝たってことだろ? 眠れないちゃんをさしおいて。うわーおめっそりゃないわ。マルコってセックスのあともそんななの? ピロートーク、大事! やることやって俺眠いからお先にって、そりゃないわっ」
「だから話がズレてるよい……」
「だからマルコは女できねぇんだな」
「っは。大きなお世話だ」
「なになに? ついにマルコがあのぺちゃぱいを寝取ったの? うわー、オヤジにぼこぼこにされちゃいなよ」
ロープを飛び移りながら降りてきたのはハルタだ。
「んなわけねえだろいっ」
「ま、僕はいつかこうなるだろうって思ってたけどね」
「ハルタ、耳ついてんのかよい……」
くくっと笑ったのは煙管をくゆらせていたイゾウだ。聞いてたのか聞こえてたのか。ゆらゆら俺たちの輪に入りながら言う。