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【ONE PIECE】 さよなら世界

第17章 リアル非充実 (5)


【♂】

 海賊生活を長くしているとどこでもすぐに寝つけるし、なにか起こったときは寝起きだろうとすぐ覚醒できる体質になっている。
 誰かが俺の部屋をノックした。
 なんだこの夜更けに。俺はまだ起きなかった。敵襲ならばこんなノックではすまず、夜中だろうと祭り騒ぎになる。ノックの主は俺が起きないことを見越していたのかドアを開けて声をかけてきた。
「マルコ隊長。夜中にすみません。見張り交代で上がりましたドーツっす」
 なにかあればまずは自隊の隊長に報告するのが先だ。十二番隊のドーツがなぜ俺に。
「どうした?」
 手元の時計を見れば三時過ぎだった。
「いや、その、が……」
 その単語で俺は飛び起きた。
「海に落ちたか? 見張りには泳げる誰かいなかったかよい」
 もうサンダルに足を通している。
「いや、落ちてはないっす。ただ長いこと甲板に出てて、さっき俺が上がるときに声はかけたんすけど、なんか元気ないっつうか。この間みてぇなこともあったし、一応マルコ隊長に知らせたほうがいいかと……」
 そんなことでいちいち起こすなと言われる覚悟もしたのだろう。だがいい判断だ。ドーツをねぎらい、足早に甲板へ向かった。

 空気は生ぬるい。新世界の海で天候が安定しないのは常だが、ここ数日は汗ばむ気温が続く。 は甲板の端に座っていた。薄着の寝間着のままだ。俺たちを信用しはじめているのはいいが、いくら『妹』でもそのまえに女であるということをもうすこし自覚してほしい。
「」
 そっと声をかけると驚いたように目を開く。寝ぼけた様子はなく、むしろ眠気のかけらもないようだった。
「マルコさん。どうしたんですか、こんな夜に」
 こっちのセリフだ。そばにはいつぞやのボトルとお猪口が一つあった。まだ持っていたのか。は飲んでいないらしい。答えを知りながら訊く。
「一人酒かい」
「あ、いえ、これは……」
 俺は隣にあぐらをかく。手を伸ばせば届く距離。肩は触れない距離。が緊張したのがわかる。
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