第8章 それは、不死鳥 (1)
最近、マルコと話がしづらい。マルコでなくとも話をしやすい男なんていないから、これが普段の私のペースといえばそうなんだけど。なんというかマルコには観察されている感が濃い。監視というよりは観察になってきた気はする。けれど、その据わった目でなにをどう見ているのかと思うと緊張してしまう。
仕事だ。仕事の上司だと思えばいい。
「マルコさん。明日、ポポロ島に上陸しましたら、ナースの方たちと一緒に一日留守させていただいてもよろしいでしょうか」
怯まずに一気に言えた。マルコはうんともすんとも言わずに私をじっと見るばかりだ。私は焦る。いけないことでも言っただろうか。
「……い、いやあの、サ、サーシャが、……その、誘ってくれたので。サッチさんにはその旨、了承いただいてますし……」
「……好きにしろい」
あれれ、なんかイキイキに陰が滲んでる気がするのは気のせい?
目が覚めると船はポポロ島に着いていた。サーシャたちはすでに身支度を整えていて、島でモーニングをとるという。モーニング! 私はパジャマからマルコのおさがりの長袖シャツとGパンに履き替え、甲板に出ているサーシャたちのもとへ急ぐ。起きてから五分もかからない。
サーシャは私のなりを上から下まで見てため息をつく。
「もう、相変わらずマルコ隊長の服ばっか着て」
「マルコ隊長の服、いい物ばっかだもんね。、お目が高い」
と、ナースのキリ。そうなんだ。知らなかった。
「でも寝癖、ついてるし」
笑いながら私の頭を撫でつけるナースのタント。
たしかに今日のみんなは一段となんだかおしゃれだ。体のラインがはっきりする服はいつものことだけど、船での私服よりもすこし上等な物を着ている。お化粧もいつもよりぬかりない気がする。三人とも一七〇センチ以上の長身に、絵に描いたような膨らみとくびれ。
私はすっぴんだし寝癖も直らず、たいらだ。べつにいいんだ。強がりじゃない。ほんと。誰かにちやほやされたいとか、モテたいとか、ましてや彼氏欲しいとか、ないから。おしゃれをする動機というか、おしゃれのやり場がない。ただ、彼女たちがこんな私と一緒にいることを恥ずかしいと思わなければいいなと思う。
「!」
「はいっ!」