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【ONE PIECE】 さよなら世界

第1章 2月30日の来訪者 (1)


【♂】

 今日も朝から絶えず雪が降っている。小さくため息をつきマグカップをおろす。くたびれた新聞はとうに読みつくしている。モビーディック号を厚い吹雪が囲んで七日目、新聞配達カモメも寄りつかず、遠征中の十六番隊とも連絡はつかず、他の通信機器も役に立たない。最悪なことにログポースの針は狂ったように回り続けている。航海士たちが日夜寝ずに海図や風や潮を読もうと働き通している。甲板では船が重くならないように隊員たちが積もった雪を海へ捨て続けている。厨房は雪が降り始めた三日目の昼食から調整を始めた。グランドライン、天候がめちゃくちゃなのは慣れたものだが、ログポースも他のエターナルポースも利かず、取りつかれたように雪ばかり。いくら白ひげ海賊団とはいえクルーたちの一部には疲労が表れ始め、それが苛立ちや不安に変わるのも時間の問題。敵船を相手にするほうがよほどマシだ。

「しかしまぁあれだな。次は何島でもいいけどよ、冬はもうしばらく勘弁だわ」
 厨房から出てきたサッチが無造作に前掛けを外しながら椅子を引く。むっくりと起きたエースが口を開く。
「なぁマルコ。やっぱ俺ストライカー出して―――」
「オヤジが行くなつっただろい」
 末っ子の申し出を旨まで聞かず釘をさしたのはもう幾度となく交わされたものだから。
「なんでかオヤジ、今回は出したがらないよな。マルコすら飛ばせてもらえないしな」
 オヤジはこの船の誰よりも長くグランドラインにいて、かつて経験したことがあるのかないのか「じきにやむさ」と余裕の笑みで空を見上げている。そんなオヤジにどれほどのクルーたちが励まされていることか。
 隊員が食堂に駆けてきた。窓から見える外が心なしか明るくなってきたようだ。
「マ、マルコ隊長! オヤジがすぐ甲板に来い、と」
「了解」
 こんな日にオヤジが甲板に出るということはなにかあるのだ。
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