第5章 肝試し【国見英】
茂みの中に一人たたずみ、開始の合図のメールが来るのを待つ。
(及川さんが)毎年恒例(ということにした)の肝試しで見事お化け役になった私は、茂みの中に隠れて肝試し開始の合図を待っていた。
.......松川さん、まだかなぁ。
「始まったら連絡するから。」と言っていた松川さんからの連絡はない。
こんな夜中に、暗いなかで怖くないはずがない。
私は水鉄砲片手にガタガタと震えながら松川さんからの連絡を待った。
「...よぉ。」
『ひぃっ!?』
上から降ってきた声に、驚いて変な声を出す。
「こんなところで何してんの。」
そう言って暗闇から現れたのは、
『あっ、英!? なんでここに!?』
「高校生にもなって肝試しとかめんどくさいし。」
英はため息をつきながら私のとなりに腰掛ける。
『で、でも、みんな探してるんじゃない?』
「金田一にサボるって連絡した。」
スマートフォン横目にちらりちらりと私を見る英。
『でも、みんな待って...』
そのとき、強い風が吹き、向かいの茂みがガサガサと揺れた。
『っわぁ!!』
慌てて英に飛び付くと、スマホから目を離さずに「子供かよ。」といいながら私の頭を自分の首元に引き寄せて撫でた。