第1章 大きな手
そんなとし君のおかげか、無事に合格したけれど、
東京という離れた街での一人暮らしが不安で、
素直に喜べずにいた。
それでも、
「とし君、受かったよ」と合格の報告をすると、
『やば!凄すぎる。本当におめでとう!』
『俺が嬉しいわ!頑張ってたもんなぁ。』
とすごく喜んでくれて、
その顔を見ていると私も自然と笑顔になれた。
あぁ、好きだな…
そう思っていたら急に涙が止まらなくなって、
とし君の前でボロボロ泣いた。
『え!?えり!? 大丈夫??どうしよ…』
焦ったとし君は、慌ててハンカチを差し出してくれた。
泣きじゃくる私の頬を両手で包み込み、
困った顔をして、泣き止むまで傍にいてくれた。
とし君の手はあったかくて大きくて、
あぁこの人の彼女になる人は幸せだろうな、
と無意識に考えていた。